> 強直性脊椎骨増殖症(ankylosing spinal hyperostosis:ASH)



 1950年にForestierらにより、前縦靭帯の骨化を伴って脊椎がankylosis(強直)に至る病態を、椎間板変性に続発する変形性脊椎症や仙腸関節を主な病巣部位とする強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis:AS)と異なった独立した病態として報告した。
 その後、Resnickらは1975~1976年にASHでは脊椎に限らず、股関節や踵骨など脊椎以外の全身の他の四肢関節部位にも骨増殖が広範囲に認められることが多いため、びまん性特発性骨増殖症(diffuse idiopathic skeletal hyperostosis:DISH)という呼称を用いるのが妥当であると提唱した。
 これらの経緯から、ASHに対しては、Forestier病、DISHなどの呼称も用いられているのが現状である。
 頚椎ではC5前方に形成された骨棘による下咽頭圧迫で嚥下障害(DISHphagia)を生じたり、また骨折を生じた場合には、強直による応力集中で横断性損傷・不安定となりやすく手術治療が考慮される。高齢者の脊椎圧迫骨折に行われているような床上安静やコルセット等による保存療法では、損傷部は徐々に悪化し、遅発性脊髄麻痺を高率に合併することが報告されている。

<症例1>
 80代女性。モップで掃除中に転倒し後頭部を打撲、左上肢麻痺を生じ救急車で当院受診、C5椎体横断性骨折, C4椎弓骨折, 強直性脊椎骨増殖症の診断で入院、手術(後側方固定術 C3-7 + 椎弓形成術 C2)を行った。リハビリテーション加療を行い、T字杖歩行が可能となり術後1ヶ月で自宅に退院した。

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術前X線

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<症例2>
 70代男性。階段で転倒し受傷、救急車で当院受診、T9椎体横断性骨折, 強直性脊椎骨増殖症の診断で入院、手術(経皮的椎弓根スクリュー固定)を行った。支持なし歩行が可能となり術後10日で退院し経過良好である。

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術前3DCT

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<症例3>
 80代男性。数日前に台所で転倒し食器棚に背中を強打し受傷、他院受診し骨折はないといわれたが徐々に歩行困難となり救急車で当院受診、両下肢完全麻痺、膀胱直腸障害、麻痺性イレウス生じており、同日緊急手術を行った。
 術後、わずかに知覚の回復と筋収縮を認めるようになったが予後不良で高齢であることから、リハビリテーション加療が行える療養施設に転院した。

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<症例4>
 70代男性。半年前より右下肢痛、歩行障害生じ当院受診、L1-4, L5/S間は骨増殖性変化により可動性がなく、L4/5間の椎間不安定性・狭窄を認めたため同部を除圧・固定する手術を行った(低侵襲腰椎固定術 MIS-TLIF)。これにより、支持なし歩行が可能となり経過良好である。

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<症例5>
 80代男性。3年前より両下肢痛・しびれ出現、他院より手術希望にて当院紹介、L4すべり症, 強直性脊椎骨増殖症の診断で入院、手術(低侵襲腰椎固定術 MIS-TLIF)を行った。リハビリテーション加療後、T字杖歩行にて退院、経過良好である。

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