> 脊髄損傷(骨傷なし)

 元々、脊髄の通り道が狭い (脊柱管狭窄) 人が、健康な人なら”むちうち”で済むような外傷でも、脊髄損傷となり上下肢が動かせなくなることが多くみられます。脊柱管狭窄を生じている原因としては、先天性や椎間板変性・骨棘形成などの頚椎症性変化、後縦靭帯骨化症などがありますが、脊髄損傷となり救急車で運ばれて初めて基礎疾患を診断される症例も少なくありません。
 治療は、まず頚椎カラーを装着しベッド上安静にてステロイド大量療法を行い、麻痺の改善が順調で椎間の異常可動性がない症例では、早期から離床します。しかし、麻痺の改善が不十分で、画像検査上明らかな脊髄の圧迫因子が存在する症例では手術を行い、さらなる神経機能の回復を期待します。
 しかし、損傷され不可逆的変化を生じた神経組織は二度と再生されないため(後遺症として残存)、予後は最初の神経組織に対するダメージの程度によって決まるといっても過言ではありません。そのため、治療の目的は、機械的損傷後に生じる脊髄浮腫等によるさらなる神経組織の損傷を可能な限り救済し、また生き残っている神経組織の機能を最大限引き出すことにあります。
 そこで、適切な時期に適切な治療を行うことが重要となり、当院では以下のようなプロトコールで治療を行っております。

受傷日     頚椎カラー固定、ベッド上安静、ステロイド大量療法
受傷後約1週間 手術(明らかな脊髄圧迫因子が存在する場合)
        術直後より拘縮予防・積極的なリハビリテーション
術後3日    車イス可
術後4日    立位・歩行訓練可

  • ※リハビリテーションは麻痺の程度によって調節します

術後10日   抜糸
術後14日   MRI, CT精密検査

  • ※特に合併症等異常なければリハビリテーション病院へ転院し、さらなる積極的なリハビリテーションを行い神経機能の獲得に努めます

<症例1>
 70代女性。転倒し上下肢が全く動かせなくなり (C5以下MMT0) 救急車で来院、精査の結果、頚椎後縦靭帯骨化症が基礎疾患として存在し、そこに外傷が加わったことで生じた脊髄損傷と診断した(今まで診断されたことはなく自覚症状もなかった)。ステロイド大量療法を行い、1週間安静加療後手術を施行した。麻痺の改善は良好で、最終観察時(術後1ヶ月)下肢筋力はほぼ正常、上肢はスプーンでの食事が可能で (MMT3) 立位・歩行訓練をおこなっているが、深部知覚の低下・痙性のため満足のいく改善を認めておらず、さらなる神経機能の回復・ADLの改善のためリハビリテーション病院へ転院した。

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術前X線

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術前3DCT

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術前MRI

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術後X線

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術後3DCT

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術後MRI

<症例2>
 50代男性。10年前より上肢のしびれを自覚するようになり、近医内科で牽引療法を行っていた。 仕事中、脚立より転倒し受傷、四肢麻痺 (C5以下MMT0) となり救急車で当院受診した。精査の結果、頚椎症性脊髄症が基礎疾患として存在し、そこに外傷が加わったことで生じた脊髄損傷と診断した(今まで診断されたことはないが、しびれ等自覚症状はあった)。ステロイド大量療法を行い、1週間安静加療後手術を施行した。MRI上では除圧良好であるが、術後リハビリテーション加療を行うも満足のいく神経機能の回復は得られず、わずかに上下肢を動かせる程度 (MMT1-2) であった。術後約1ヶ月でさらなる神経機能の回復・ADL改善のためリハビリテーション病院へ転院した。

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術前MRI

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術後MRI

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