> 特発性脊椎硬膜外血腫とは?

 特発性硬膜外血腫は、発症率0.1/100,000人といわれる稀な疾患とされ、明らかな原因がなく脊髄硬膜外に出血し血腫を形成、この血腫が脊髄を圧迫することで麻痺を生じる疾患です。
 片麻痺で発症することもめずらしくないため、脳疾患と判断されて診断が遅れ、結果重い後遺症を生じることがあります。

> 治療成績


  年齢 性別 治療 発症から手術までの期間 脊柱管
占拠率 (%)
改良Frankel分類
(初診時→最終)
C.R.*までの期間
症例1 44
F 保存   38.2 C1→E (C.R.) 1ヶ月
症例2 75 M 手術 3日 34.3 C2→E (C.R.) 6ヶ月 
症例3 59 F 手術 1日 36.8 C2→E (C.R.) 6ヶ月 
症例4 68 M 手術 1日 37.3 C1→E (C.R.) 3ヶ月 
症例5 67 F 手術 16日 39.6 C1→E (C.R.) 6ヶ月 
症例6 80 F 手術 6時間 42.4 C1→E (C.R.) 1ヶ月
症例7 45 M 手術 6時間 50.2 C1→E (C.R.) 3ヶ月 
症例8 60 F 手術 7時間 59.1 B1→D2  
症例9 50 M 手術 8時間 64.6 C1→D2  
症例10 66 M 手術 5時間 35.7 C1→E (C.R.)  3ヶ月 
症例11 55 F 保存   26.2 C1→E (C.R.)  1ヶ月
症例12 56 F 保存   32.3 D1→E (C.R.)  1ヶ月
症例13 67 M 手術 4時間 51.5 C1→E (C.R.) 3ヶ月 
*C.R.:Complete Recovery しびれもない完全回復

 多くの症例は、完全に回復し予後良好ですが、一方、たとえ早期に手術を行っても後遺症を生じる症例も存在します。そのため、当院では麻痺が軽度か速やかな改善傾向を示さない症例は原則緊急手術を行うことにしています。
 

血腫が大きい程(脊柱管占拠率が大きい程)、脊髄神経へのダメージが大きくなり後遺症が残りやすい傾向があります。
 特に 脊柱管占拠率が40%を超えるものは、可及的すみやかに手術を行う必要があります。

手術までの時間が短い程、早期に回復する傾向があります。

> 実際の症例

<症例>
 60代男性。電球を交換する作業中、突然頚部に激痛生じたが、そのまま様子をみていた。帰宅途中、右上下肢が徐々に動かなくなり歩行困難となったため救急車で来院した。右片麻痺を呈していたため頭部精査したが明らかな病変を認めず、頚椎硬膜外血腫を疑いMRIを撮影し確定診断した。麻痺が進行性であり、肩の挙上不能、上位頚髄の圧迫が強いため緊急手術(片側椎弓切除+血腫除去)を行った。
 麻痺は術直後よりほぼ正常なレベルに改善、当初しびれが残存していたが術後3ヶ月で消失、特に不自由なく復職している。

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術前MRI矢状断像

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術前MRI水平断像

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術中所見(血腫除去前)

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術中所見(血腫除去後)

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術後MRI矢状断像

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術後MRI水平断像

<症例>
 40代男性。電車通勤途中で突然背部痛出現、接骨院に行った後自宅に戻った頃には立位も不能となり救急車で当院受診した。精査の結果、胸椎硬膜外血腫と診断、両下肢筋力はMMT 1〜2, 回復兆候がみられないため緊急手術(片側椎弓切除+血腫除去)を行った。
 これにより麻痺は順調に回復し、ほぼ正常なレベルにまで改善、特に不自由なく復職している。

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術前MRI矢状断像 (T1)

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術前MRI矢状断像 (T2)

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術前MRI水平断像 (T2)

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術後CT水平断像

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術後MRI矢状断像 (T2)

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術後MRI水平断像 (T2)

<症例>
 80代女性。食事準備中に突然頚部痛、四肢不全麻痺出現し救急車で当院受診した。右優位の麻痺で肩の挙上不能、MRIでC3/4レベルに硬膜外血腫による脊髄の圧排を認めたため、特発性頚椎硬膜外血腫と診断した。麻痺の速やかな改善徴候がないため同日緊急手術(片側椎弓切除+血腫除去)を行った。
 これにより術直後より肩の挙上が可能となり、術後2週では、しびれも消失し特に不自由なく退院した。

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術前MRI矢状断像

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術前MRI水平断像

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術前MRI前額断像

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術後MRI矢状断像

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術後MRI水平断像

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